R.ヴァーグナーの大作楽劇(この人は歌劇とは言わずに楽劇と言った)に、リング四部作という全17時間、4日間かかる作品があります。映画「地獄の黙示録」やプロレスラー藤原喜明のテーマ曲で名高い「ワルキューレの騎行」はこのリング四部作の二日目「ワルキューレ」の一部なのですが、とにかく演奏するにも聞くにも時間がかかります。
私は卒論を書くときに聞いて何とか全曲聞いたのですが(2回ほど)、これは大学のライブラリーだったので手元にはずっとありませんでした。
で、先日渋谷に行ったらタワーレコードのクラシックコーナーで1780円でリング四部作全集が売っていました。全14枚で1780円、1枚127円の安さです。
中身も良くなかなかお買い得でした。演奏家は日本では無名の方が多いですが、そこはドイツオペラ界の底力、上手いかたがやっています。
ただR.ヴァーグナーというおっさんは、現代日本で言うと黛敏郎、(文学者ですが)石原慎太郎みたいな人で、うっかり好きだというとナチあつかいされたりします。現にイスラエルでは21世紀だというのに演奏禁止です。
とはいえこのヴァーグナーを私が評価するのは2点
1:ミニマルミュージックの元祖の一人である 2:20世紀映画音楽の基礎技法を築いた人である
です。 まず1は、ニーベルングの指環前夜祭(第一日)「ラインの黄金」冒頭の1音だけで数分間もたせているところが挙げられます。現在の耳で聞けばあたりまえなのですが、19世紀ロマン主義絶好調の時代からすると、そうとうに抑制的でシンプルすぎるモノだったはずです。
また、2ともからむのですが。「ライトモチーフ」という繰り返し同じメロディを使う技法もミニマルといえばミニマルです。
2については「ライトモチーフ」という登場人物に同一のメロディを合わせる手法が、のちのハリウッド映画に影響を与えました。もちろんヴァーグナー以前にこのような技法を用いた人はいるのですが、ドイツ人の常でこれを徹底的にシステマティックに推し進めたのがヴァーグナーで、その結果
他の作家も学習可能な技法となった、と言う点が大きな功績です。
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